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『また帰ってこい。我が妹ジルよ。』
不思議と、レムオンの言葉を思い出した。もう、ノーブルには居られない。帰る場所を失って、大切な家族との思い出が詰まった家も失った。そういえば、父を亡くしてチャカと二人きりになって…反乱グループのリーダーになって…「私がチャカを守るんだ。男になんか負けない。」そうしてるうち、いつの間にか口調も男言葉に変わっていった。いつだって、自分が“先頭”だった、レムオンに逢って彼の後ろを歩くまでは…。
「兄さん、か。」
帰る場所を与えてくれた。頼れる義兄(アニ)。兄さんと呼ぶことにさえ安息を感じるのは、そうとう疲れていたからかもしれない。
もう一度、空を見上げる。
彼も、この空を見ているだろうか…。
一夜明けて、ジルとチャカの二人は、道を一本隔てた向かいにある冒険者ギルト゛に顔を出していた。これといったアテが無い以上、冒険者になり自由に旅するのも悪くはない。ノーブルにいるころ、あそこのギルドマスターにも言われた。
『ジルに、この町は小さすぎるのかもな。』
「姉ちゃん、登録終わったぜ。ほら、さっさと姉ちゃんも済ませちゃってよ。」
「ああ。」
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