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「貴族どもの事だ。自分に都合の良い妄想は出来るくせに、全く現実が見えていない。あんなくだらん連中をまとめてエリスに対抗せねばならんのかと思うと、気が滅入る。」
「兄さんの不機嫌の理由は、それか。」
レムオンは、振り返ると真っ直ぐにジルを見つめた。
「ジル、世界を回り、そして見るのだ。俺は、従順な部下が欲しいのではない。共に歩める同士が欲しい。」
「兄さん…。」
驚いたようにキョトンとした顔で、ジルはレムオンを見上げた。彼は、口元にフッと自嘲ぎみな笑みを浮かべ、かぶりを振った。
「俺としたことが、少し話し過ぎた。」
言いながら、彼は扉の方へ歩きだす。すれ違いざま、レムオンはジルに声をかける。
「無茶をするな、くだらん事で死んだら許さん。また、帰ってこい。」
「うん。じゃあ、また。」
リューガ邸を出ると、待ち合わせの時間にもちょうどいいくらいになっていた。そろそろ、チャカと合流しよう。そう思い、駆け足で広場を抜けようとした時だった。
「ジル!」
「?」
辺りを見回す、とノーブルで出逢ったエストが立っていた。
「兄さんに、話しはきいたよ。君の事だって、すぐに分かった。」
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