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表通りを一本裏に入った所に、何やら掛け声が聞こえる大きめの建物があった。開け放たれている窓を覗くと、どうやら此処は剣術道場のようだ。
「お姉ちゃん達も、入門したいの?」
不意に、小さな女の子に声をかけられた。
「見てただけだよ。」
ジルは、笑って答える。
「そうなんだ?ここの道場は、オッシさんが先生をやっててね、アイリーンお姉ちゃんも、ここで毎日練習してたんだよ。」
「アイリーン?」
「うん、お姉ちゃん凄く強くてね。でも、今は街を出ていっちゃったんだぁ。騎士になりたいんだって。」
「そうなんだ。」
「あ、おばちゃんだ!アイリーンお姉ちゃんのお母さんだよ。」
少女が指差す方向に、赤い髪の温厚そうな婦人の姿があった。こちらに気がついたのか、頭を下げる。ジルとチャカの二人も、つられて頭を下げる。
「貴女を見ていると、娘を思い出すわ。」
思いがけず、家に招待されたジルとチャカ。
「あなたたち、冒険者?」
「はい、ジルと言います。こっちは、弟のチャカです。」
「そう、もし旅先でアイリーンという娘に会ったら、たまには家に帰るよう伝えてくれないかしら?元気がありすぎて喧嘩になるかもしれないけど。」
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