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エストは思う。兄には、ジルのような“味方”が必要だ。権力や名声に媚びる事なく、純粋に兄を想って手を貸してくれるような…孤高で、皆に心を閉ざしている兄。本当は、とても優しい人なのに…──。
分断の山脈を越え、数日。慣れない旅の疲れがピークになった頃、ジルとチャカの二人は、ようやくデインガル帝国帝都エンシャントにたどり着いていた。
冒険者ギルドに手紙を届けた二人が、真っ先に向かった先は宿屋だった。
「さすがに、疲れた。」
「姉ちゃん、オレ今日はもう歩けない。身体中、バキバキいってる。」
部屋に入るなり、二人はベットに倒れこんだ。初めての長旅だ。農家に生まれて、ノーブル以外の町を知らなかった二人。疲労は、半端じゃない。
「思ってたより、冒険者って大変だぜ。自由気ままつったって、自分で全部やらなきゃいけないもんなぁ。あ、リーダーは姉ちゃんなんだから、依頼選びとかは全部まかせたからなっ?」
相変わらず姉頼みの弟をジルは、苦笑しながら見つめていた。
窓から見える帝都は、ジル達の居たロストールとは全く雰囲気も異なっていた。
「明日は、街を見学するか。」
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