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「エリエナイ公に、妹君がいたらしい。」
「愛人の娘、らしいな。」
「まぁ、先代のエリエナイ公は、“お盛んな”方だったらしいから…──。」
「これは、皆さんお揃いか。ご機嫌うるわしゅう。」
「え・エリエナイ公…。」
「何か?」
「いや、なに、今日も天気が良いことだと皆で話していたのですよ。」
フン、ゲスどもめ。
レムオンの冷たい視線の先には、ヘビに睨まれた蛙のように縮こまった貴族達の姿があった。面と向かって文句を言うような度胸はないくせに、話す事といえば誹謗中傷ばかりだ。
「くだらん。」
王城は、いつもと全く変わらない。ふと、ジルの事を思い出した。着飾って、色恋の話しにばかり興味を示す貴族の婦女子。本当に、あいつが自分の妹だったなら、剣など握らずああして笑っていたのだろう。命をやり取りするような、無茶をする生き方をする必要は無かっただろう。
「あら?これは、レムオン様。ご機嫌麗しゅう。」
「これは、ティアナ王女。ご機嫌麗しゅう。」
声の主は、あの忌々しいファーロスの雌狐の娘、そして幼馴染みでもあるロストールの王女ティアナだった。
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