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叶うことのない秘めた想いを冷たい仮面の下に隠し、彼もまたその場を去っていった。
賢者の森。エンシャントを出てすぐ、南東に広がる森がそう呼ばれている。運命に選ばれた者だけが、賢者に逢えるとウワサされている森だが…。
エンシャントの冒険者ギルドで、『落とし物の妖精の笛を見つけてほしい。』という依頼を受け、探し物ついでに森をさ迷う二人は、一軒の家にたどり着いた。
「姉ちゃん、ここって。」
ガチャリ。
家から出てきたのは、長い金髪の美しい顔立ちの青年だった。
「おや?お客様ですか。珍しいですね、お茶でも入れましょう。どうぞ。」
「えっと、貴方が賢者様?」
「ふふ、そう呼ぶ人もいますね。立ち話もなんですから、中へどうぞ。」
賢者と呼ばれているくらいだから、堅苦しいお爺さんを想像していたジルだったが、現れたのが見とれるほどの美形だったことに驚きを隠せない。戸惑うチャカを引っ張ると、ジルは家の中へと入って行った。
自然の温もりがある落ち着いたインテリアが置かれた部屋は、シンプルでありながら、いれてくれているお茶のティーセットの繊細な細工を見れば上質なものが置かれているのだろう。
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