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「…──で、お前はそのゴブリンどもにアッサリやられて、その腑抜けた顔を晒している、という訳か?」
「違う!負けたのは事実だけど…それだけじゃない。」
ロストール、レムオン邸。
冴えない顔のまま、なんとなくレムオン邸へと向かったジル。帰宅していたレムオンの、手厳しい言葉と冷たい視線にさらされていた。
「色々、一度に起こったから…昨日の夜は、“闇の巨人”とか言う化け物に襲われるし。」
「ほう?」
ジルは、昨夜千年樹前広場で起こった出来事をレムオンに話す。
『眠れない、な。少し、散歩でもするか。』
禁断の聖杯を取り戻すつもりで挑んだゴブゴブ団に、アッサリ返り討ちにされたジルとチャカ。彼らは、意外にも紳士的なようで、膝をついたジル達にトドメを刺すような真似はしなかった。
「これに懲りたら、もう放っておいて欲しいゴブ。」
駆け出す三匹を、悔しげに見送った。
「力不足、だな。」
静まりかえった夜の街を歩きながら、ジルは、そう呟いた。
空には、満天の星が輝いている。柔らかな月明かりが、サラサラと夜風になびく金色の髪を照らす。
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