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「お兄ちゃ…兄さん!あんな奴に様付けしないでっ!兄さんを“そんな身体”にした張本人なのにっ!!」
「それにしても、この少女が無限のソウル?」
ジルは、自分の事を言われているのが何となく分かったが、全身から力が抜け気が遠くなっていくのを感じていた。薄れる意識の端に聴こえた最後の言葉。
「今はまだこんなだが、いずれ世界を動かすような存在になるかも知れない。宿屋に送ってやれ。」
「…──昨夜は、そんな感じだったし。さっきはスラムの方を覗いたら、例の禁断の聖杯を狙っている“魔人”に出くわして殺されそうになるし…。」
「それで、そんな調子だという訳か。どちらにしろ、弱いお前が悪い。」
「うっ。」
返す言葉もなく立ち竦むジル。何を思ってここに来てしまったのか、さすがに少し後悔してきた彼女に、“冷血の貴公子”と呼ばれる彼が意外な提案をする。
「そうだな、俺はこれから城に行かねばならん。帰ってきた妹と晩餐を共にしたいが、そう冴えない顔をされていてはつまらぬ。頼んでいくから、風呂にでも入って気分を変えておくのだな。」
「…兄さん。」
「勘違いするな、テーブルマナーを教えてやると言っているのだ。」
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