†義兄と義妹(アニとイモウト)†

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 ノーブル伯のジル。その名前が若手冒険者の有力株として知られはじめた頃、リベルダムの冒険者ギルドで、ジルは一人の男に出会った。 背が高く体格もガッシリとしたその男は、重厚な黒い鎧を身に纏い、豪奢な金髪を肩ほどに伸ばしていた。 「お?ジル、良いところに来たな。彼が、冒険者なら誰でも憧れる英雄ネメアだよ。」 「え?!あ、はじめまして。ジル、と言います。」 「ジル、良い目をしている。」 「ありがとうございます。」 英雄ネメア。闇に落ちたディンガル皇帝、魔王バロルを三人の仲間と共に倒した英雄だ。その強さは計り知れないが、ビリビリと伝わってくる存在感がある。 そんな時だった。 「ダークエルフが出たぞ!」 「?!」 「!!」 冒険者を狩るダークエルフがいる。その噂が流れはじめたのは、最近の事だ。ネメアの後を追うように表に出たジル、ギルド前には二人の男が倒れ伏し、周囲は騒然としている。 「凄い腕前だ。急所を矢で射抜かれた。」 「スラムの方に、逃げ込んだだぞ!」 「ジル、行くぞ!」 「はいっ!」 ネメアとジルの二人は、スラムへ駆け出した。
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