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二人が去ると、ネメアは膝をつく彼女の元に向かう。
「…うぅ…殺せ…。」
「…心まで、闇に染まった訳ではあるまい。生きろ。そして、自分に出来ることを探せ。」
「闇に染まったこんな身体で、何ができる…!」
質問には答えず、ネメアはジルを見る。
「また、会うこともあるだろう。強くなるのだな。」
残されたジルに、ダークエルフの彼女が語りかける。
「答えろ、人間。私に、何が出来る?…答えて…。」
「生きていれば、見つかる…。」
「人間は、残酷だ。妹を殺し私の体を闇に染め…それでも、生きろというのか。」
立ち去る彼女の後ろ姿に、ジルはいつかの自分の姿を重ねていた。
かつて父が死んだ時、ボルボラを憎み、無力だった自分自身を悔やみ…剣をとった。エルフが、強い悲しみや恨みの感情を強くいだくと、肌の色も黒い闇に染まりダークエルフとなってしまう。もし自分がエルフだったら、間違いなくダークエルフになっていたはずだ。肉親を殺された気持ちは、痛いほどによくわかる…。
「生きていれば、何か出来るはずだ。生きていれば、いつか悲しみを癒してくれる何かが見つかるよ…。」
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