†狼と戦女神†

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「バルザー!」 迷宮の終点、そこに立つ黒髪の男。精悍かつ鋭い目付き。手には、身の丈ほどの長槍が握られていた。 研ぎ澄まされた剣のような気配を持つこの男こそ、破壊神ウルグの円卓騎士バルザーだった。 「…来たか、ネメアよ。」 「バルザー、何を企んでいるかは知らん。が、貴様はここで終わりだ。ジル、いくぞ!」 「はい!」 まるで、手応えがない。相手の攻撃は、繰り出される一撃一撃が、ひどく重い。一方で、こちらの攻撃はまるで効いていないかのようだ。剣を振るう先に立つ男の表情は、変わる事がない。が、攻防の末、とうとうバルザーの片膝が沈む。 「そこまでだ。」 ネメアの槍が、魔人の身体を貫いた。バルザーの動きが止まる。しかし、その口許には笑みが浮かぶ。 「我が事、成せり。…獅子の子、槍の主を殺す。破壊神の魂は、獅子の子に…宿る…運命は、変えられぬ。」 「…言いたい事は、それだけか?」 魔人は、一滴の血を流すことなく閃光と衝撃を残し、霧散していった。 と、同時に足元が地震のようにぐらつき始める。 「ここは、もう崩壊する。周りに集まれ、脱出する。」
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