†狼と戦女神†

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気が付けば、光に包まれた身体は、リベルダムの街に降りたっていた。 「何が、『また逢うときまでに強くなれ』よ。」 「姉ちゃん、何怖い顔してんだよ。もうすぐロストールだぜ。」 「ん、ああ。私は直ぐにリューガ邸に向かう。チャカは、皆と宿で待ってて。」 「分かった。」 いつもと変わらぬ街並みを抜ける。ただ、街を行き交う人々の中には、宣戦布告してきたディンガル帝国への不安を口にする者も多いようだった。 貴族街の一際豪奢な館が建ち並ぶその場所に帰ると、門前でちょうど表に出ていたセバスチャンがこちらに駆け寄る。 「ジル様、ちょうど良いところにお帰りになられました。女王陛下から至急の呼び出しが。馬車を用意します、直ぐに城へお向かい下さい。」 「分かった。」 駆け抜ける馬車に乗り、流れる景色を見つめながら、ジルは思う。 ネメアは、この美しい街を戦火にさらそうというのだろうか。力で、支配しようというのだろうか。 武力を使った力による支配…それは、ジルが憎んだボルボラの圧政と変わらない。 尊敬と羨望の先にあった獅子の後ろ姿…ジルは、拳を握りしめる。
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