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ジルは、村の広場まで戻ってきた。彼女の姿を見て、小さい少女の母親は、あからさまに嫌な顔をする。村の皆が、ジル達のことを快く思っている訳ではなかった。
何かとボルボラに反抗し、彼の不機嫌に拍車をかけている彼女達を疎ましく思っている村人も多い。ジルは、ため息をついた。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
急に声をかけられ、振り返る。見ると、自分と同じ歳くらいの身なりのいい少年が立っている。
「僕、兄さんに会うためここに来たんだ。金髪で背が高くて…一見冷たそうなんだけど、ホントはすっごく優しい頼りになる人なんだ。知らない?」
明らかに冷たい金髪で長身の男なら、見たけれど…。
「ごめんなさい、心当たりがない。」
「そう、ありがとう。あ、僕の名前はエスト。良かったら、君の名前を教えてくれる?」
「私は、ジル。」
「ジル、素敵な名前だね。それじゃ。」
村の入り口近くにある家に帰ったジルは、森に行く前に自宅に飾られた父と母の姿が描かれたスケッチを見に戻っていた。昔、まだ村に宿屋もなく、旅をしている画家を家に泊めたときお礼に描いて貰ったものらしい。
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