最果ての灯

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次の日に、飛鳥が病室にやってきた。平然を装っているつもりかもしれないが何かあったのはばればれだった。 いつものように軽い気持ちで、飛鳥に声をかけたが、まさかのこんなことになるとは思いもしなかった。 「悩みがあるんだったらいつでも言うんだぞ」 「言っていいの」 「おう、なんでも言ってくれ」 「…祐毅ちゃんのことが好きだから。だよ」 「えっ?」 最初俺は何を言われたのか理解することができなかった。理解はしたが、真正面から幼馴染に言われるなんて想像もできなかった。 「えっと、それは、つまり…」 「告白、だよ…」 告白。先日受けたのとは全然違うものだった。新鮮な感じがした 「そ、そうか…、告白か」 「う、うん、この間の祐毅ちゃんを見て、抑えきれなくなっちゃったんだよ」 この間っていうのはあの事件のことか。 「よりによって、こんなときにかよ」 本当にタイミングは最悪だった。病気だと知る前だったらOKしたんだろうな。俺だって恋くらいしてから死にたいと思った。でも、そんな悠長なことをいってられる状況ではなかった。俺は今月いっぱいでいなくなってしまうのだから。今、付き合ったら飛鳥を悲しませるだけなのに。 でも、断っていいのだろうか。飛鳥が勇気を振り絞っていてきた言葉なのに。もし、ここで断ったりでもしたら、俺たちの関係は今まで通り続いていくのだろうか。 悩めば悩むほど、頭がいっぱいになっていく。 「ねえ、祐毅ちゃん。何か言ってよ」 今ここで、答えを出すには無理があった。 「…ちょっと、考えさせてくれるかな。返事は後日に言うから」 「うん」 飛鳥はそう言うと、病室を出て行ってしまった。 ただ一人残された俺は、さっきの告白のことで頭がいっぱいだった。
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