最果ての灯

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その日は一日中、飛鳥のことを考えていた。 どんな選択がいいのだろうか。何をしたら飛鳥を悲しませずに済むだろうか。ただ、それだけを考えていた。 夕暮れ時になると、父さんがやってきた。 「やあ、祐毅君。浮かない顔をしてどうしたのかな。何か悩み事があるのかな」 相変わらず、父さんは鋭かった。父さんの前では、どうしても嘘を付けなかった。 「父さん、相談があるんだけど」 「何、どうすれば父さんみたくイケメンになれるかだって」 「いや、言ってないし。…それより、父さんは、俺みたいな状況で告白されたらどうする」 「祐毅君、告白されたのかい。飛鳥ちゃんにでも」 ドキッ。心臓が止まりそうになった。 「なんで飛鳥なんだよ。違うよ、同級生だよ」 別に嘘は付いていない。告白されたのは事実だし。 「ふーん、祐毅ちゃんももてるんだね」 父さんはニヤニヤしながら俺の話を聞いた。 「とにかく、告白されたのはいいんだけど、返事をまだしてないんだよ」 「どうして、返事をしないんだい」 「ほら、俺ってこんな体だし、もう長くはないんだから、付き合ったら、悲しませるだけじゃないいのかなっと思って」 「そうだな。確かに祐毅ちゃんの選択次第で相手の悲しませ方が変ってくるね」 父さんも同じように思っているみたいだ。 「じゃあさー、祐毅君はどうしたいんだ」 「え!?」 「いや、相手のことをいっぱい考えているみたいだけど、祐毅君は、病気云々でどうしたいんだ」 「俺は…」 俺は、飛鳥の告白を受けて何を感じたのだろう 「相手のことを考えるのも大事だけど、自分がどうしたいのかを考える方が僕は重要だと思うよ」 「…ちょっと、説教じみちゃったね。じゃあ、僕は行くから、じっくり考えて結論を出すといいよ」 「うん、ありがとう父さん」 父さんのおかげで、もうひとつの選択肢が生まれた。 「俺がどうしたいのか、か」 少しだけ気持ちが軽くなった。
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