最果ての灯

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次の日、俺は飛鳥を携帯で病院の屋上に呼び出した。もちろん、告白の返事をするためだ。 冬の風は、とても寒かった。 屋上のドアが開き、飛鳥が出てくる。 「おはよう、飛鳥」 俺は迷いのない声で挨拶をした。 「祐毅ちゃん、おはよう。…それで、話っていうのは」 飛鳥も俺と同じようにまっすぐを向いているように見えた。 「昨日の告白なんだけどさあ、俺、すっごく嬉しかったんだ。どんな男でも女の子に好きって言われるのは嬉しいものだけど」 「あれから、じっくり考えたんだけど、俺もなんだかんだ飛鳥のことが好きだったのかもしれない。でも、俺、鈍感みたいだから、その思いに気付くのに結構時間がかかっちゃったんだよ」 「俺は飛鳥のことが好き」 「それじゃあ、付き合ってくれるの」 「悪いけど、ちょっと俺の話を聞いてくれるか。答えを出すのはその後で」 「うん」 「…あのさあ、俺、今病気にかかっているんだよ。異核性摎筋病っていうので、神経が衰えていき、次第に体全体が衰弱してしまうものなんだ。どうも、その病気は、奇病らしく、俺の寿命も後1カ月が限界みたいだ」 「…………」 「だから、俺と付き合うんだったら、俺のことを知った上で決めてほしかったんだ。だから、飛鳥には選ぶ権利があるんだ。俺と付き合うかどうか」 飛鳥には決めてほしかった。これが俺に出来る唯一の答えだから。 「…………。知ってたよ」 「え!?」 「祐毅ちゃんの病気のこと、知ってたんだよ。知ったのは怪我をした日だったけど」 飛鳥の発言に驚愕した。 「じゃあ、飛鳥は知ってて、俺と付き合おうとしてたのか」 「うん。祐毅ちゃんのことが好きだから」 飛鳥の返答は、思いがけないものだった。知ってたなんて、思ってもいなかったから。 「いいのかよ、こんな俺で。後、たった1カ月しか生きられないんだぞ。それで、飛鳥は本当にいいのかよ」 本当にいいのか。こんな俺でも。 「うん。私決めたんだ。どんな時でも祐毅ちゃんの側にいて、祐毅ちゃんの支えになってあげたいんだ。それがあたしに出来る、祐毅ちゃんへの恩返しだから」 飛鳥は微笑んで、俺を見つめていた。
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