最果ての灯

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クリスマス当日。 飛鳥との約束の時間は、夕方なので、それまでは家族と一緒に半日を過ごした。 昔から、クリスマスは家族で一緒にという習慣があったけど、両親は俺に気を使ってくれて、夜は飛鳥と一緒に過ごす許可をもらえた。 「なあ、母さん、父さん。俺さあ、この家に生まれてこれて、本当に良かったと思うよ」 昼時にそんなことを母さんと父さんに投げかけた。 「俺が病気になった時も、一生懸命芝居を続けてくれて、本当に嬉しかった」 いつも通り過ごしてくれることは、とても難しかったはずなのに、最後まで笑っていてくれて本当に嬉しかったんだ。 「…けど、俺はそんな父さんや母さんに何一つ恩返しすること出来ないんだ。こんな親不孝な子供で、本当にごめん」 感謝しても感謝しきれないほど愛してくれた両親に、何にも返せないことは、本当に申し訳なかった。 「そんなことは無いよ。生まれてきてくれたことが、既に親孝行だよ。少なくとも僕と母さんはそう思っている」 「父さん…」 「でも大丈夫だよ。後10年くらいすれば、また会えるかもしれない」 「そんなに早く来るなっ」 「あはは」 「あはは、じゃねぇよ。…ったく」 それから、色々な事を思い出しながら、家族との最後の団欒を過ごした。
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