最果ての灯

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あれから、1カ月くらいしたある日、パパの紹介で霧村家の住人と一緒に流星群を見に行った。その中に、私を助けてくれた男の子がいたのは驚いた。けど男の子は私のことをまったく覚えていなかったことには少しショックを受けたが、家も近かったので、 いつでも会えると思うと嬉しくてたまらなかった。 飛鳥の話を聞くと、そんなことも子ども時代にあったのを思い出したが、あの時の少女が飛鳥だったなんて思ってもいなかった。 「あの日から、私は祐毅ちゃんのことがずっと好きだった」 飛鳥の口から改めて好きだと言われると照れてしまう。同時に飛鳥がそんなときから俺のことを思っていてくれたのに、俺は飛鳥の期待にこたえられない自分が悔しかった。 「あ、今、星が動いた」 突然飛鳥が空を指した、俺もつられてその方向を見ると、辺り一面に星が右上から左下へと動いていっている。 「流星群だ」 前見たときよりも、キレイで沢山の星が動いていた。 実際は流星群は、彗星から放出された塵が動いているらしいが、この際きれいなものだったら何でもよかった。 少しの間、空を見上げていると、一瞬、眩暈がした。 「う……」  同時に全身が激痛に襲われた。 「な、なあ、飛鳥」 「なーに、祐毅ちゃん」 飛鳥は相変わらず流星群に夢中だった。 「そのまま、見ていながら聞いてほしいんだ」 「俺さあ、飛鳥と付き合えて本当に良かったと思う。未来のない俺なんかと付き合ってくれて、一緒に泣いたり、笑ったりしてくれて、本当に嬉しかった」 「小さいころから、飛鳥は俺のことを好きだったのにその思いに気付いてやれなくて本当にごめん。もっと、飛鳥と色々な事を話したかったよ」 「でも、この1カ月、本当に楽しかった。これは全部、飛鳥が与えてくれた幸せなんだ。飛鳥に出会えて俺は沢山の幸せをもらった。十分すぎるほどの幸せをもらったんだ」 「だから、俺の人生は幸せだったんだ」 「大好きだよ。飛鳥…」 体はとうに限界を迎えていた。 神様、俺は本当に幸せでした。良い家族に恵まれ、良い仲間、良い家族に恵まれました。 だからどうか、みんなが、飛鳥がずっと幸せでいられますように。 俺の意識はそこで止まった。
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