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誰もいない校舎に響く音色
音色の主は、それを鮮やかに生みだしている
隣校舎の三階、窓際のグランドピアノ…
僕はじっとそこを見つめた
肝心なところは、揺れるカーテンが邪魔をする
合間から、この学校の制服と思われるものが見える
「生徒…?」
それまで穏やかだった風が、急に強く吹き荒れた
カーテンが大きく揺れる
音色の主が姿を現した
風に吹かれ、揺れる長い髪
鍵盤に注がれている伏し目がちな瞳
身に纏っているのは、確かにこの学校の制服だった
「女の子…」
また強い風が吹く
彼女の長い髪が乱れ、僕の方へ揺れた
ピアノの音色が止まる
目があった…
一瞬の沈黙
僕は女の子に笑いかけてみた
彼女は驚いた表情で、逃げるようにその場を去る
「……なんだ、アレ…?」
ポカンと、僕は呟いた
もう一度、女の子のいた場所に目をやる
カーテンは今、穏やかな風に吹かれている
窓際のグランドピアノが光を受けて輝いていた
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