0人が本棚に入れています
本棚に追加
森の中に入るとほぼ同時に、辺りは薄暗くなった。木々がこれぞとばかり生い茂り、太陽光をほとんど、全てと言っていいほど遮っている。進めば進むほど暗さは増し、数キロメートル進んだところで、完全に光が消えた。
兵達は、それぞれ松明を灯した。すると周りには、数百を超える白骨化した死体が転がっていた。かつてこの地で何が起こったのだろうか。
「恐れるではない。前へ進め」
グトールの声に押され、兵達は前進し続けた。
パキュッ・・。
「・・・・・・」
一人の兵が死体の骨を踏み砕いたようだ。
パキュッ・・パキッ・・
「・・・・・・」
辺りは静まりかえる。
これは不吉な予感というのだろうか。
パキュッ・・パキッ・・パリパリ・・
骨の砕けるような音が辺りに広がる。
バタン!!!!
突然何かが倒れる音がした。
一人の兵が悲鳴をあげた。
隣に立っていた兵が突然首から血を吹出し、倒れ、そのまま息絶えたのだ。悲鳴をあげた兵はパニック状態となり、進んできた道を逆走して逃げ出した。
「この臆病者!戻らぬか!」
グトールの叫び声は虚しく響きわたるのみで、兵は姿を消した。
今度は違う場所から悲鳴が上がる。
その光景は目にすることが出来た。一人の兵が死体に襲われている。羽交い締めにされ、そのまま暗闇へと引きずられていった。
パキュッ・・パキッ・・パリパリ・・。数百の死体が動き出し、一団の元へと差し迫って来た。
「戦えーーー!!」
グトールの言葉で、一団は一斉に戦い始めた。ある兵は剣を振り回し、死体の骨を砕いた。ある兵は、体当りで死体を突き飛ばし、体をばらばらにさせた。また、複数の死体に襲われ下敷きになる兵、折れた骨の尖った先で腹を刺される兵もいた。
「グトール様。このままでは全滅してしまうかもしれません。まだ戦っていない我々だけでもこの場から逃れましょう」
「・・・仕方あるまい」
数十の兵を率い、グトールは立ち去った。
「ぐっ!!!」
その時、グトールの背中に突然激痛が走った。
森の足を踏み入れて間もない間に、多数の兵を失ってしまった。しかし、目的を見失ってはならない。
」
グトールの背中には大きな引掻き傷があった。
グトールは上半身に包帯を巻いた。
「先へ進め」
一団は歩きだした。
最初のコメントを投稿しよう!