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ああ、そうか。
「死んだんだ、僕」
女の子を庇って、車に轢かれて、死んだんだ。母さんも車に轢かれて亡くなったんだっけ。
真っ白い世界に目が慣れてきた。こんな異様な空間に居て慣れが出てくる自分も恐ろしいなと感じたと同時に、視界の右側だけ真っ暗なことに気付いた。
「ガーゼ…?」
恐る恐る手で触れて確認してみると、ガーゼのような、柔らかい感触があった。
事故にあった時と今では首と胸の痛みは全くないのに、何故か右目だけ処置が施されていた。
その場で突っ立ったままその理由について頭をフル回転させていると。
「ほう、起きたのじゃな。よしよし」
と、背後から声がした。
反射的に振り返った僕は、唖然とした。
キラキラと光る金色の髪。
艶やかな彩りを持つ唇。
モデル並みのスタイルの良さに、豊満な肉体。
妖しげなオーラを放つその女性は、ジジイ言葉を使いましたよね今さっき。
僕がずっと訝しげな視線を送っているからか、見た目と口調のギャップが激しいその人は苦笑しながら言った。
「ワシは怪しい者じゃないから安心しなされ。とりあえず、何でお主がこんな所にいるのかとか色々教えるからワシに着いてこい」
「は、はあ…」
やはり見た目とのギャップが凄すぎるんですけど。
真っ白な世界をただひたすら歩く。時間的には結構経った気がしたがまだ到着しない。
歩き始めて15分程経った頃だろうか。僕達の目の前に白い扉が現れた。(とは言え全部白だからよく見えなかったりする)
女の人が扉を開けると……中には二人分の椅子とその間に小さな机があったが、予想に反して水色だった。そこは白で統一してほしかった。
「とりあえず座るのじゃ。それから話すからの」
「は、はい」
緊張する僕の背中を優しく押してエスコートしてくれた。実は(男じゃないけど)紳士なのか?ますます不思議だ…。
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