13/16
269人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
「よかった」 晴れやかに笑う稔。 ただその笑顔が、 自分に向けられたものでないことを四季は知っていた。 「でも嬉しいな。 あの子に友人ができるなんて。 いつも一花と一緒だったからね」 「………」 嗣人を想っての笑顔。 四季は稔の笑顔が好きだったが、 その笑顔はあまり好きになれなかった。 「でも一つだけお願いがあって、 もし嗣人が…」 また嗣人。 そう思った四季は思わず稔の口を両手で塞いだ。 「先生!もういいよ。 嗣人くんの話は」 稔が驚いている。 しかし一番驚いているのはそれを見ている四季自身で、 四季はとっさに稔の口から両手を離した。 「ごめん」 四季は謝ったあと、 返事を待たず自身の胸中を話しだした。 「一つ言わせてほしいんだ。 さっき先生は嗣人くんのこと“一番大事な存在”って言ったよね」 「うん」 「それは揺るがない?」 「あぁ」 大事なものは大事。 揺らぐはずがない。 稔は迷いなく返事をした。 「……じゃあ、ここからが本題」 四季は人差し指を突き立てた。 「…“一番大事な存在”はいい。 でも“一番気になる存在”と“一番愛してる存在”は嗣人くんに譲らないで。 その座は俺がもらうから。ね?」
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!