0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
桜が散り始めの此の季節。
新たな暮らしに身を染めようとする女の子が此処にも一人…
名前は晴麻璃子。
中学時代は所謂陰キャラと言う部類に属していて高校デビューを密かに夢見る少女である。
見た目は至って平凡な為此と言った特技も特徴も無く、勉強が出来るわけでもない極々普通の女の子で有る。
何を間違ったのか県内で有名な美男美女が多いとされる桜ノ宮学院に入学を決め、新たな自分になろうと朝から頑張って居るようで…
「あ、癖で三つ編みしちゃった!」
中学三年間を三つ編みで過ごしていた彼女は其の癖が直ぐに抜ける訳も無く時間も無くなり何時も通りの膝下スカートで新たな学校へと向かうのであった。
「行ってきまーす」
未だ朝の五時半だと言うのに家を出たのは彼女の家から桜ノ宮学院は遠い理由から電車通学を始める為である。
そんなこんなで特に何が起きる訳でも無く駅へと辿り着けば電車に乗るだけとなった。
(駅まで一時間か…結構掛かるなぁ…)
程なく目的の電車がやってくれば躊躇いがちに電車に乗り込んだ。
実を言えば彼女は人生で初めて電車に乗ったと言う。
余り混んでいる様子も無く電車に揺られる時間も長いので座席へと腰を降ろした。
暫くした所で徐々に混み始めた車内で朝早かった事からうとうとと意識が遠くへ行こうとしている。
その時不意に何かが彼女の左太股に触れた、と思うと微かに撫でる様な動作へと変わっていく。
違和感を感じた璃子は左に目だけで視線をやると普通の極一般的なサラリーマンが彼女に詰める様に座っていた。
今度は左下へと視線をやると先程の違和感の正体が彼の手だと分かり一気に血の気が引いた様で顔を真っ青にさせる。
太股を撫でている手は段々と彼女のお尻へと近付いていった。
其れを拒む様に僅かに右へ逃げようとするも如何せん車内はいつの間にか人が一杯できっちりと座席には人が詰められていた。
右隣の人に迷惑を掛ける訳にも行かず彼女は口で拒む様に小さな声で
「あの…止めてください…」
と呟いた。
引っ込み思案な彼女はそれ以上を言うことも出来ず恐怖心から力強く鞄を握り締めて早く駅に着かないかと目を閉じていた。
「…おい」
唐突に誰かに声を掛けられた璃子はふと目を開く。
然し変わらず彼女に触れている手は離れていないようで時々襲う不快感に眉を寄せる。
其れでも声の主を突き止めようと顔を上げれば
最初のコメントを投稿しよう!