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『黒瀬さん?今何処ですか?』
「今、個室居酒屋にいるけど……」
『あー、いつもの場所ですね?
10分くらいしたら着きますから!
ブツ………プー…………プー………』
…………なんだったんだろ
人騒がせな奴………
この居酒屋は個室になってて業界の人間もよく利用するから直ぐに判ったのだろう。
それにしても切羽詰まった海老原の声に首を傾げつつスマホをテーブルに置いて、目の前の二人の痴話喧嘩に加わり時間を潰した。
暫くすると入口のドアが開き
僕の姿をキョロキョロ探す海老原の姿。
片手を上げ来る様に促したが
首を横に振り、僕に手招きする。
━‥‥なんなんだよ……
そう思いながら海老原に近寄ると
外に連れ出された。
店のドアを閉めたと同時に
顔の前で両手を合わせ、頭を下げる。
「黒瀬さん!俺の一生のお願い聞いて貰えませんか!?」
思わず首を傾げながら海老原を見ると、居酒屋の壁を指差しながら言った。
「こいつ。黒瀬さんトコ置いて貰えませんか?」
海老原が指差した方を見ると
どれだけの大喧嘩をしたんだと思う程、服もボロボロにした人が
ダラリとうなだれ座り込んでいた。
「………悪いが今僕は女性禁制のシェアハウスに居るんだ」
「あーアイツ……髪長いし華奢だけど、れっきとした男ですよ!?」
………ウソ。
暗闇に妖しく映える
白い肌も
綺麗に手入れされてる長い髪も
男!!??
「ははは……海老原君?冗談は止めてくれ。
こんな細いのに……」
「モデルなんですよ。
黒瀬さんなら聞いた事あるでしょ?
紅海里(くれないかいり)
中性的な容姿で、今人気のトップモデル……。
CM にも出てますよ」
「……その子が、なんでこんな事になってるの?」
「俺も今一事情が掴めなくて……。
なんせ家に帰れないみたいなんですよ。
俺、明日からツアー同行なんで……。
Reikaさんが今無活動なら、黒瀬さんにお願い出来るかなぁ?って思ったんですが………」
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