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「また来るな……」
タカシはいつも哀しげな瞳
で帰っていく。
罪悪感と後悔で堪らなくな
る――
自分の部屋に戻ると、セー
ジはベッドの上のウサギを抱
いた。
もうくたびれて薄汚れたウ
サギだけど、セージにとって
は何より大切な物だ。
「ごめん……」
本人に言えないのでウサギ
に謝った。そして少しだけウ
サギを涙で濡らした――
一方、タカシは……
「うむ」
三日三晩かけて巨大なウサ
ギのヌイグルミを作っていた。
同室であるハルカには『寝
る場所がないだろう!』と怒
られたが、それを理由にふた
りでひとつのベッドで寝れた
ので問題ない。
後はこれをセージに贈るだ
けだ。『こんなものいるか!』
と怒るだろうか?――怒った
顔も可愛いから問題ない。
巨大でいびつなウサギが、
セージにとって大切な抱き枕
となったのは言うまでもない。
――おしまい。
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