1章 始まりの鐘

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痛みのおかげで、今自分がいる場所がよく分かった。 そこは……紛れもなく線路の上。 向こうから勢いよく電車が走ってくるのが見える。 だけど、呆然とそのまま座っていることしか出来ない。 死ぬ時が来た………。 うるさいほど聞こえてくる電車の走る音は体を動かしてはくれない。 あー本当に短い人生だったよ。 さっきのカラオケ屋…また行きたいなー。 あー今パフェが食べたい。 あと、テストで50点とってみたかった。 ありふれた日常生活のことが頭を過る。 いつものことが出来なくなることがまだ、考えられないけど。 そして……何より幸せになりたかったな。 するとまたざわめき声が聞こえてくる。 なんか、体が軽くなったみたいにフワフワ浮いてる感覚に陥る。 ……電車がきた。 思わず目を閉じる。 電車に引かれるのか……相当痛いんだろうな。 首ってポーンって飛んでっちゃう? 誰か飛んでいった首、拾ってくれるかな。 死体綺麗なまま死にたいけど多分ぐちゃぐちゃなんだろうなあ……。 そんな考えたくもないようなことを考える。 だけど、いくらたっても痛みはこない。 目を閉じたまま首を傾げる。
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