1章 始まりの鐘

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時計が示す時間はきっちり10時。 電話が鳴り響き部屋から出るよう指示された。 「あーもうこんな時間かよ。もっといてぇ~」 「10時かぁ。早いね時の流れって」 「かっこいいセリフですこと~」 「帰りたくないな……」 家なんて帰りたくない。 帰ったところで何かあるわけでもない。 「また奈々の帰りたくな~い!が始まった~」 「本当嫌なんだもん。みんなみたいに親の仕事が深夜までとかだったらなー」 「本当いいよ~。夜いないとかまじラッキー」 私にはこの世で一番嫌いなヤツが家に帰って来る。 まだ、10時だから帰って来てはいないだろうが。 「せめて、兄弟がいたらいいのにな……」 一人っ子の憧れだよね。 どれだけ仲が悪くて、憎まれ口を叩かれようが叩かれまいが兄弟がいることは羨ましい。 小さくため息が漏れる。
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