1章 始まりの鐘

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「奈々……?」 「あっ、ごめん。脱線したね!!帰ろっか」 友達からの反応がどう返ってくるかが、恐くて話しを逸らした。 レジで会計を済まし店の外へと出る。 もうとうの昔に太陽は沈み、月が顔を出している。 10時だけど、道路を走る車は多い。 「じゃあ、また明日ね」 「気をつけてね奈々!そっちの方面あんた一人なんだから」 「平気、平気!!みんなも気をつけてよ!!じゃね」 手を振りながらみんなと別れ、一人駅へと向かう。 残業終わりのサラリーマンがため息をつきながら歩いている。 だが、疲れてはいても家に帰れば温かい家族が待っている。 その当たり前の出来事が、私にとっては当たり前ではないからか、不思議と寂しさが少し込み上げる。
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