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結局
「ダメなモノはダメ」
蒼隆の答えは変わらず
部屋を飛び出した更夜は 縁側でブツブツと恨み言を吐きながら 雪の残る庭を睨み付けていた。
「くしゅっ…」
小さく クシャミをした更夜の肩に
フワリと羽織が掛けられる。
そっと 頭をあげると
光秀が柔らかく微笑んでいた。
「隣に座っても よろしいですか?」
静かな声で訊ねる光秀に
自分の横をトントンと叩く。
それを了承の意と 光秀は隣に腰掛けた。
「蒼隆様は 更夜様の事をご心配されて 仰っているんですよ? 今 巷は狂気に溢れています…
そんな所に 更夜様を向かわせる訳には行かないでしょう?」
「なんでよっ 私だっていつまでも 子供じゃないんだからっ 巷が狂気で溢れているなら尚更【シキ】を見つけるのに 丁度良いじゃない」
「光秀だって 狂気の中で 蒼隆にあったクセに」
「そうですね…」
ふと 光秀に遠い昔の記憶が蘇る。
青白く燃える炎の中で
主をこの手で打ち共に逝くハズだったこの身を その男は魅了した…
蒼い炎を纏い「俺と来るか?」と…
「ちょっとぉ~ 人の話聞いてた?」
いえっ 全く聞いてませんでした…
などと 言える訳もなく とりあえず 笑う。
更夜は「うっ…」
と 小さく言葉を詰まらせると
「光秀のその顔 反則… 絶対 光秀より 強い【シキ】見つけるんだからッ」
すっくと 立ち上がった彼女は そぅ言い残して パタパタと自室に駆けていった。
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