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姫々原 菖蒲(ヒメビメハラ アヤメ)。俺は、変な当て字の入った名字と花の名前で構成された名前を持つ、男子高校生。
手入れなんてロクにしていない為、髪質に救われているとしか思えない少し長めの黒髪に、女顔だが、意図的にしている他人に威圧感を与える目が特徴的な容姿をしている。
威圧的な目にしていないと、とてもじゃないが男子に見えないと、どっかの馬鹿親に言われてからずっとそんな感じだ。
歳は17で、学年は2年。だが、授業は出るだけでロクに聞かない落ちこぼれという奴だ。
ついでにいうと、かなりの数の不良を束ねる人間でもあり、人間関係に『友達』というカテゴリが存在しない人間でもある。
『舎弟』というカテゴリでなら、結構な人数が存在するのだが。
正月。
1月1日を間近に控えた12月31日今日この日。俺は自宅で、年越し蕎麦なんて物を作っている最中である。
使い込まれているが、綺麗に整理整頓とついでに、大掃除まで済まされた明るい色彩で彩られたキッチンで、早速料理をするという若干勿体なく感じる行動である。
キッチンから見える位置にあり、リビングに置いてあるテレビには、年越しの定番とも呼べる紅白が映っている。
先程まで、蕎麦を茹でながらそれを見ていた俺なのだが、電話が掛かって来た為、紅白閲覧は中断。蕎麦と電話に専念していた。
『菖蒲さん、良い女見つけたんですがどうしやす?』
……いや、知らねえよ。
電話から聞こえてくる舎弟の言葉に対して、心の中でツッコミを入れた。
舎弟は、というか俺の知る限り、俺の名前を呼ぶ人間では約1名を除き、全員『菖蒲さん』と呼ぶ。
「それを俺にどうしろと……」
俺の呆れ混じりの声を聞き、舎弟の『へ?』といった感じの声が聞こえた。
……あーいや、別にお前の言葉の意味が分からない訳じゃない。
ただ、何故それを俺に言うって話なんだが。
『いえですから……』
「俺に言うな。以上」
話を遮るようにそれだけ言って、俺は電話を切った。
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