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「あ、大地ー!やっぱり助けに来てくれたんだー!」
パイプ椅子にふんぞり返り、ラグビー部員にうちわを扇がせ、優雅にアクエリアスをガブ飲みしていた知り合いの女子生徒が僕に手を振った。
「あれが、お前の彼女か?」
「いえ、ただの知り合いです」
僕は生徒会長に首を振り、部室の片隅のボールを入れる籠の中に目的の女性の姿を見つけ、慌てて駆け寄った。
「キューピー!良かった!無事だったんだね!」
先月、山の中に自生する植物を調べていたところ、運命の出会いを果した女性。
ニワトリのキューピーは、僕の姿を見て嬉しそうに「コココ」と喉を鳴らしていた。
よかった、ラグビー部の野獣共に食べられてなくて。
「く、刈谷お前!まさか生徒会長を引き連れて新見さんを取り返しに来るとはな!」
「違う!僕はこのキューピーを取り返しに来たんだ!綾子のことは好きにしてくれて構わない!だが僕の大切なキューピーちゃんをお前達のような肉食獣に渡すわけにはいかない!」
「ええー!?あたしニワトリに負けたの!?」
「おい、ラグビー部?これは一体どういうことなんだ?お前ら、女の子を誘拐した上に刈谷が大切にしていたニワトリを奪ったのか?」
「ああいや、これはその。俺達にもサッカー部や野球部みたいに可愛いマネージャーが欲しいなって思ってですね。そこの農作業野郎に我らがアイドル新見綾子様がコキ使われている様子を見ていられず、こうしてお連れしてマネージャーになってくれるよう頼んでいるところなんですよ。ついでに、旨そうなニワトリがいたんでもらってきた次第で」
「どっちにしろマネージャーとしてコキ使おうとしてるじゃねぇか。あと、ついでだろうが何だろうが人のニワトリ盗っちゃダメだろ」
会長の正論に、ラグビー部員はバツが悪そうに口を噤んだ。
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