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―――キーンコーンカーンコーン
いつも変わらぬチャイムの電子音が校内に鳴り響き、今日も教師の居ない授業は終了した。
未だ睡眠から覚めずそのまま机に突っ伏して寝続ける者。
スチール缶を掲げて缶蹴りの参加者を募る者。
ごく少数だけど、部活へ行く者。
そんな各々の青春を謳歌するクラスメイト達に軽く挨拶を交わし、多くの生徒達が闊歩する校内を僕は一人突き進む。
いや、一人じゃなかった。
「大地ー、今日はどこ行くのさ?また購買のマヨネーズを買い占めるの?」
僕らの世界では、お金は価値を持たない。
生徒達によってご自由にお持ち帰りされた購買の商品が翌日の朝には補充されているように。
パンパンになったゴミ箱の中身がいつの間にか綺麗さっぱり空になっているように。
バットで叩き割った校舎の窓が次の日には元に戻っているように。
僕らの財布の中身はいくら自販機の中に投入しても、朝目が覚めれば元の金額に戻ってしまっている。
だから、僕らは自動販売機以外に対してお金を払うという行為をしない。
けれど、前住んでいた世界の習慣はそうそう消えるものではなく、僕らは購買で好きな商品を持っていく行為を「買う」と呼んでいる。
「いや、もうマヨネーズは十分だよ。今日はちょっと長期的な実験を思いついたんだ」
「ふーん。ま、時間ならいくらでもありそうだもんね」
今までの実験で分かったこの世界のことはたくさんある。
例えば、ゴミ箱は空になっても、僕が蓄えているマヨネーズは消えも腐りもしないこととか。
とにかく、この世界は僕達に優しい。
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