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四月。それは何の前触れもなく始まった。
山の中に広大な敷地を有する全寮制中高一貫教育の学園――相葉学園高等部の全校生徒は、ある日目が覚め、しばらくして異変に気が付いた。
大人がどこにも居なかったのだ。
生徒達は戸惑いつつ腹を空かせつつ学園内を探したが、授業が始まる時間になっても昼を過ぎても高等部の生徒以外は見つけることができなかった。
そして、おかしな情報が出回る。
“学園の外に出られない”と。
その情報に誤りはなく、ほぼ全校生徒に近い数の生徒が山を降りようとしたが、気が付けば校門前まで戻ってきてしまうというお伽噺のような不思議体験をすることになった。
携帯電話は学園の外にだけ繋がらず、寮や学校のテレビもネットも使えない。
僕らはこの学園に閉じ込められたのだと、誰もが認めざるを得なかった。
そうして時が過ぎれば、当然生徒達は混乱し、狂乱し、自殺者が何人か出てもおかしくはない。
しかし、この学園には彼がいた。
新しい生活指導教師により学園内での男女交際が禁止になった時も、入学希望者の激減で廃校の危機に瀕した時も、火事が起きた時も、熊が出た時も、彼は立ち上がり、生徒達を率い、ことごとく学園を救ってきた。
学園の英雄、生きる伝説。
生徒会長――檜山誠司は、この世界でも変わらず僕らを救うため立ち上がった。
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