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生徒会長は言った。
「みんな、落ち着いてくれ。落ち着いて、今俺達にとって一番大切なことを考えてくれ」
生徒達は耳を傾けた。
「それは、“俺達が変わらないこと”だと思う。もちろん、成長や進歩をしないという意味じゃない」
生徒会長は声を上げた。
「俺達は学生だ。高校生だ。何があっても、それを変えちゃならない。それを忘れちゃならない」
生徒会長は誓った。
「約束しよう。必ず、この状況から脱却する方法を見つける。俺の生徒会長という肩書に誓って、お前らみんなを元の生活に戻す。必ずだ」
生徒会長は頼んだ。
「だが、それにはどれくらいかかるか分からない。この状況では、まだまだ何も分からない。だから、俺が元の生活に戻る方法を見つけるまでの間、みんなには今まで通り高校生でいて欲しい。突然この状況から脱却した時、今まで通りの生活にすぐ戻れるように」
生徒会長は説明した。
「だからみんなには今まで通り授業に出て欲しい。学力向上とまでいかなくていい。机に向かう習慣を忘れなければそれでいいんだ。そうだな、時間割通りの教科を、各時間最低教科書一ページ。それだけでいいんだ。あとは教室内であれば何をしていても構わないし、生徒会に申請してくれれば課外授業も積極的に許可しよう。体育の時間は体操着に着替えてテキトーに遊んでればいい。毎日が自習なんだ。お前らなら、できなくはないだろ?」
生徒会長はそう言って笑い、全校生徒を魅了した。
この世界が不思議ならば、彼の存在もまた、不思議と呼べるものだった。
この学園には、不良はいない。
彼がとっくに全員更生させていたから。
この学園には、彼の言葉に耳を貸さない者はいない。
とっくに彼のことを妄信しきっていたから。
彼の言葉はまるで催眠術のように僕らを操り、全校生徒は最低限の規律を維持したまま、自由な学園生活をいつしか楽しむようになっていた。
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