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―――七月下旬、夏休み序盤。
「会長、ここです。この理科室で、彼は研究をしているとかいないとか」
「おう、案内サンキュ。ていうか、俺は研究室よりもこの畑の方が断然気になるんだが。この畑の作物も、刈谷大地が作ってるのか?」
「はい、何でも一人酪農科と呼ばれているとかいないとか。こんなことしなくても食料には困らないのに、何を考えているんでしょうね?」
「なるほど、面白いな」
「会長?」
「とにかく、会って話がしたい。中に入るぞ」
「あ、はい」
「――失礼する。刈谷大地はいるか?」
頭の中にモヤがかかったような、朦朧とする意識の中、僕は新たな侵入者の気配を察知し、身を守るため強引に体を起こした。
「だ、誰だ?僕に、何をする気だ!」
体を起こすと、モヤは徐々に晴れたが、先程のダメージはまだ残っているらしく、僕は思わず嘔吐しそうになるのを口に手を当てることでなんとか耐えた。
「おい、一体どうしたんだ?この部屋の荒れ方は……何があったんだ?お前が、刈谷大地なのか?」
僕の名を呼ぶその男子生徒に、見覚えがあった。
我らが伝説の生徒会長、檜山誠司だ。
「会長?奴らは?奴らはどこに行ったんですか?」
「奴ら?ここにはお前以外いなかったが」
「く、そうか。僕はあまりの臭いに気を失っていたのか。ラグビー部の奴ら、あんな強烈な靴下を嗅がせるだなんて、とても人間のすることとは思えない!」
理科室の中には、茫然とする生徒会長と副会長しかいない。
くそ、やはりあの子はラグビー部の連中にさらわれてしまった。
「あのクソ野郎共!ブッ潰してやる!」
僕は急いで武装し、ラグビー部に報復し彼女を奪還すべく、理科室から飛び出し畑を飛び越えた。
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