小姓

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「先生~!どこですか!?」 声を張り上げながら屯所内を走り回る 朝餉の時は隣に居たのに、何故いない…… 隣で凄く嫌そうな顔をして胡瓜を箸で突いていたのに、すこ~し目を離した隙に姿を消した先生 しかし、これは珍しい事ではない 稽古の指南を任されている日はだいたいこんな感じだ ーー君が付き合ってくれるのなら、稽古に出るよ。結構楽しいから。 そう言っていた先生は最近、稽古の指南をサボるようになっていた 理由は一つ ーー打ちのめす小姓が居ないのに、行ったってつまらないから そう、私は朝に行う先生との稽古には顔を出しているけど、隊士に向けて行われる稽古には参加していない なぜなら、私が参加すると先生が他の隊士そっちのけで、私を指導(という名の暴力)してしまうから、土方さんから参加禁止命令が出たのだ それに、最近は小姓の仕事も覚えてきて、やる事が沢山あるからっていう理由もあって稽古には出ていない っていうか、どんだけ稽古をつけたくないんだよ…と呆れながらも土方さんに怒られるのだけは嫌なため、一生懸命サボっている先生を探す 「先生~!!出て来いこのやろぉぉぉ!!」 疲れ果て怒りも込めて叫ぶが、まるで反応がない ち ょっと待て、これって小姓の仕事なのか? 自分以外の小姓を見たことがないため、何も分からないけど、サボる先生を探すって…雑用以前の問題な気がするのは気のせいではないはず とぼとぼと中庭を歩いていると、斎藤さんが前から歩いてきた いつも通り腕を組み、凛とした表情で歩く姿はかっこ良くて、独特な雰囲気を醸し出している 「斎藤さん、先生を見ませんでしたか?」 「見ていない」 「そうですか……」 全く、どこに行ったんだろう… 通り過ぎようとする斎藤さんから目を逸ら……すことは出来ずに、視界に入った黒い物体を見下ろす 美しい姿勢で凛々しく歩く斎藤さんの後ろを可愛らしい生き物が、とことこと歩く 斎藤さんの歩幅に合わせて歩く姿は、なんとも愛らしい 「あ、あの………斎藤さん?」 無言で振り向く彼は「にゃ~」と可愛らしく鳴いて、足に擦り寄る猫を無表情で見下ろした
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