121人が本棚に入れています
本棚に追加
「女だとて許さん!!殺す!」
更に加わる力に刀が押されて、肘が曲がり、目の前に鋭い刃が迫る
必死に耐えながらも頭は混乱していた
殺す?
この人、本気で私を殺そうとしてるわけ!?
初めて向けられる殺気
そして、再び振り上げられた刀を唖然と見上げる
そんなわけ………
「見苦しいなぁ」
ガキンッという金属音が聞こえて、咄嗟につぶっていた目を開くと視界を紺色の着物が遮っていた
張り詰めた空気とは不釣り合いな声
足元を見ると、さっきまで男が持っていた刀が落ちていた
「せっかく煩い馬鹿から逃れて散歩してたのに、目障りなことしないでくれる?」
どうやら、目の前にいる紺色の着物を着た人に助けられたらしい
私の位置からは背中しか見えないけど、髪の毛は綺麗に高く結い上げられ、手には綺麗な刀が握られていた
男の刃こぼれした刀とは大違いの美しい刀に目を奪われる
「きっ、貴様!!邪魔だてする気か!!」
「邪魔なのは君だよ。私の気分を害した罪は重いけど?」
スッと男に向けられた刀に辺りがどよめく
男が怯むのが雰囲気で分かった
「今は血を見る気分じゃないんだけど…」
目の前の彼はどんな表情をしているのだろうか
私からは見えない男が短く息を吸う音が微かに聞こえた
「気が変わる前に消えた方が良いんじゃない?」
それが決め手だった
彼の言葉を聞いた途端に、男は転げるようにその場から逃げ出した
ドタバタと走り去る足音を聞きながら、自分の手を見下ろす
刀を握る手は力強く鞘を握ったまま固まり、微かに震えていた
最初のコメントを投稿しよう!