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…とまぁ、逃げてきたのは良いけど…
「本当にすごいな、昔の日本!」
私は今、ぶらぶらと適当に街を歩いている
様々な店が並び、店先では店員が呼び込みをしているため、かなり活気に溢れている
チラチラとみんなの視線が私に向けられているのは、この服装のせいだよね、絶対
この時代の女性はしっかりと着物を着ていて、当たり前なことに洋服を着ている人なんていない
すれ違う人がギョッとして私を上から下まで見てくるのは、若干居心地が悪い
タイムスリップして一番最初に困ること、それは服装なのだと学んだ
「着物を買うお金なんてないしなぁ…買ったところで着れないんだけど」
浴衣ですら着れない私には難易度が高すぎる
うーん…と頭を悩ませながら、トボトボと歩いていると後ろから声をかけられた
「貴様!待てと言うのか聞こえぬのか!」
深く考えすぎていて聞こえていなかったみたいだ
どうやら何度も呼んだらしい
声を荒らげた男は今にも刀を抜きそうな勢いだ
しかも、男の後ろには更に2人いて、その人達も刀に手を添えている
「貴様か!先程から市中を不埒な姿で徘徊している怪しい者とは!」
不埒だと!?
この格好のどこが!?
「ちょっ、汗が直ぐに乾く機能性抜群のTシャツと伸縮性MAXのショーパンを馬鹿にっ、…嘘です嘘です、本当はめっちゃ安いTシャツと中学生の頃から使い古してるショーパンです。盛ったことは謝りますから、刀を抜かないでぇぇ!!」
ちょっと言い返しただけなのに、直ぐさま抜刀したお侍さん達
反応はぇよ!!
キレる若者か、あんたら!!
「意味の分からぬことを!!貴様、異人か!!」
「偉人!?」
あれ?私って偉人だっけ?
タイムスリップして記憶が?
確かに、何かを発明したり、人を驚かせる様な何かをしたことがあるような、ないような……
「偉人…そうといえばそうかもしれないし、そうじゃないかも「やはりか!!」
偉人というわりには、全然敬う気のないお侍さん達
むしろ今直ぐにでも切りかかってきそうな勢いだ
なぜ!!?
もしかして、マッドサイエンティスト的な奴だと思われたのか!?
「あの、私は別に怪しい者なんかじゃ「黙れ!」
振り上げられた刀を見た店先の女性が悲鳴を上げる
それにハッとした私は足元に落ちていた桶を男に投げつけた
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