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桶の中の水と柄杓が宙を舞い、男達の目を眩ませる
その隙に逆方向へ走り出した
「なっ、待て!!」
一瞬は怯むものの、直ぐに追いかけてくる男達に軽く舌打ちをする
こんな短時間で何度も絡まれるなんて
やっぱり、この時代でTシャツ短パンは無理があるか
「待てと言うのが聞こえぬのか!」
「って、危な!!」
振り向いて思わず叫ぶ
刀を抜いたまま走る男達は周りの事など気にせず、そのまま人混みを掻き分けてくる
歩きタバコとかのレベルじゃないからね!!
走り刃物とか最凶だわ!!
私と後ろの男達を見た人々が一気に道の両脇へ非難する
なんとかして、あの人達を巻かなくちゃ…
自慢ではないが、足にはそこそこ自信がある
それに、相手は刀を持って左手は鞘を掴んでいるため、そんなにスピードは出ていない
街の角を利用して逃げれば何とかなるはず!!
チラッと後ろを見て距離を確認すると、一気に速度を上げて走り出した
何度も角を曲がり、その直後に速度を上げて、更に角を曲がる
京都という土地は、人を巻く面ではとても適した道が多い
人を巻く面って、そんな場面はなかなかないだろうけど
「流石に…ここまで来れば…っ、大丈夫…だよね」
切らした息を整えるために膝に手をつく
狭い路地裏に隠れながら辺りを見回してみる
見事に巻くことが出来たらしく、後ろに男達の姿はなかった
「っていうか、絡まれ過ぎっしょ……」
この時代に来てから、まだ2時間くらいしか経ってないのに、男に殺されかけ、男共に追い回されるだなんて…
どんだけ治安悪いんだよ、昔の日本
とにかく、このままここに居たらいつまた誰に絡まれるか分かったもんじゃない
「仕方ない…疲れたけど、とりあえず郊外に行こう…」
背負っているリュックを背負い直し、重い足を引きずるように歩き出した
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