小姓

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「猫だな」 「猫……ですね」 当たり前なことを言う斎藤さん いや、当たり前だけど! 斎藤さんが言うと、なんだか凄く分析した結果、その答えを導き出した的な感じに見えるから不思議だ 見下ろしていた斎藤さんがしゃがみ込んで、黒猫にそっと手を差し出す すると、猫は甘えるような声をだしてペロッと斎藤さんの手を舐めた ナニコレ……。 なんだか物凄く可愛いっ。 無表情だけど、ぎこちなく猫の頭を撫でる斎藤さんを含め、すっごく可愛いんですけど!!! 写メりたい、今すぐに!! しかし、斎藤さんの前でスマホを出すわけにもいかず、ただただ悶える 「残念ながら、お前をここに置くことはできぬ。他の者に見つかる前に立ち去れ」 真剣な目で見つめ合い、立ち去るように諭す斎藤さん 「いや、あの…斎藤さん?」 いや、凄く丁寧な対応だとは思うけど、猫って言葉分からなくね!? 猫に立ち去るように諭すと、斎藤さんは立ち上がって再び歩き出す しかし、そこはやっぱり猫 斎藤さんの言葉は通じず、とことこと嬉しそうに後を追って歩きだした だろうね!! だって、絶対に通じてないもの! 当たり前の結果に納得していると、カチャッという鯉口を切る音がした直後、斎藤さんは猫に刀を向けていた 猫の正眼を捉え、触れるギリギリの位置に剣先がある 「ちょっ、ちょっと!!」 斎藤さんが振り向いて、刀を猫に突きつける動作は一瞬過ぎて、視界に捉えるのがやっとだった 無駄のない足運びと流れるような体さばき 抜刀した所は目に見えかなった 「逃げぬのか」 刀を突きつけられた猫は不思議なことに、逃げること無くその場に留まって、真っ直ぐ斎藤さんを見上げている 張り詰めた空間で見つめ合う、一人と一匹 そして、おろおろする私 ジッと無言で猫を見下ろしていた斎藤さんはゆっくりと刀を下ろすと、静かに鞘へ納めた
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