小姓

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まるで斎藤さんに斬る気がないことを悟っていたかのように、猫は動かない 斎藤さんが刀から手を離した途端に、にゃ~と鳴いた それを見ていた斎藤さんは黙って猫に背を向ける 「源さんに頼んでみるか…」 どうやら、源さんに餌をもらえないか聞きに行くらしい 歩きだした斎藤さんと黒猫の背中が、なんだか、似ているように見えて、少しだけ笑ってしまった 斎藤さんが黒っぽい着物を着ることが多い所が似ているのか、涼しげな目元が似ているのか……それとも落ち着いている所かな? 凛々しく歩く一人と一匹の背中を見送っている最中に、やっと本来の目的を思い出した 「あっ、先生のことを探してるんだった!!」 斎藤さんと猫に癒されている場合じゃない!! 「先生~!!今日のお茶菓子は先生の大好きな菊屋の豆大福ですよ~!!」 必殺技である食べ物の名前を口に出すと、縁の下から物音が聞こえた そ~っと近づいて耳を澄ます 「沖田はん!食いもんに釣られたらあかんで!」 「だけどね、あの子馬鹿だから、早く行かないと大福を蟻に食べさせちゃうんだよ」 どの口がそれを言うかっっっ!! それは先生が土方さんに仕掛けた悪戯に私が引っかかって転んだんだからね!! 先生は何故か土方さんを敵視しており、時々悪戯をしては嫌がらせをしている そして、不思議な事にその被害に合うのは土方さんではなく、ほとんど私だった 「でも、今出たら朝月はんの思うつぼ「みぃ~つけた~」 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 縁側の上から身を乗り出して、頭を出すと、私の頭が逆さ吊りにされた生首のように見えたらしい子供達は悲鳴を上げた 震えて先生に抱きつくのは、八木家の兄弟である勇坊と為三郎である ちなみに、新選組の屯所は八木さんと前川さんのお家をお借りしています 「あ、そこに今、蛇が…「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」 指をさして、いかにも蛇がいたかの様に振る舞うと、子供2人は慌てて縁側から這い出て来た ふっ、まだまだ餓鬼だな…
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