小姓

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「はっ、そんなことも「新見副長」 私の肩に腕を回しながら、馬鹿にしたように鼻で笑う男の言葉を静かな声が遮る あまり動かない首を動かして、声のする方を見ると、相変わらずむさ苦しい中でも涼しげな斎藤さんがいらっしゃった あれは……… 「なんだ斎藤、今いいところだってぇのが分からねぇのか?」 いやいや、全然よくないから! な~んて、言えるわけもなく、肩に回された腕が重いなぁと呑気に考えてみる さり気なく腕から逃げようとすると、更にがっしりと肩を掴まれて重さが増した マジですか… 「近藤局長と土方副長がお待ちです」 明らかに喧嘩を売るような声色をしている男の挑発には全く反応せず、淡々と用件を伝える斎藤さん っていうか、近藤さんを待たせてるだとぉぉぉぉ!? そんなことを私がした日には、先生だったら迷うことなく「切腹」と笑って死刑宣告をするだろう そう考えると先生ってこの世で最も裁判官になっちゃいけない人だよね 公平なんて言葉、似合わなすぎる この時代に裁判員制度がなくて良かったぜ… 「近藤と土方だと?」 未来へと思いを馳せていると、近藤さんを呼び捨てにする声が真上から聞こえて更に驚く まさかの呼び捨て!!? 先生の報復が恐ろしすぎてキョロキョロと辺りを見回していると、突然、ドンッと背中を突き飛ばされる 「うぇあっ!?」 前のめりに倒れこみ、転ばないように足を踏ん張った 「ちっ、面倒臭ぇな」 首をコキコキと鳴らして、怠そうに歩き出した背中を見送る あの人、今日初めて会ったんだけど、一体何者だったんだ… あの人について分かったことと言えば髪フェチってことと、先生とは絶対に仲良くなれないってこと位だ
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