121人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫か?」
近寄ってきた斎藤さんの手元を見下ろす
彼に抱えられている黒猫は脇の下に手を入れられているため、ぶらーんと足が宙に揺れている
ピリピリした雰囲気の中、真顔の斎藤さんが猫をぷらぷらさせている姿は、なんとも異様で……可愛かった
「って、和んでる場合じゃないから!!」
ぺしり、と顔を叩いて自分を一喝する
突然、自虐的行為をする楓を見た斎藤が微かに目を丸くした
「斎藤さん!さっき、副長って言いましたよね!?」
さらっと流しそうになったけど、そういえば斎藤さん、あの人のことを副長って呼んでたよね!!?
「あぁ、間違いなく言ったな」
斎藤さんに抱えられている猫が、なぁーん、と鳴き声を上げた
うむ、可愛いけれども今はそれどころではない!!
「副長って土方さんと山南さん以外にも居たんですか!?」
「総司から聞いていないのか?」
斎藤さんの質問に、勢いよく首を縦に振る
「今のは新見副長だ」
「まさか、局長も三人いるぜ、とか言いませんよね?」
あはは、とふざけて言うと「局長は近藤さんと芹沢さんの二人で十分だ」という驚きの返事をいただいた
「って、二人目がいるのかい!」
「それも今知ったのか?」
「はい!」
知らなかった……
沖田先生を罵りたいけど、どうせ「聞かなかったでしょ」とか言うに決まってる
「あぁ見えて副長。今回は上手くいったが、今後は用心するんだな」
確かに、今回はたまたま斬撃が止まったが、次はないだろう
石が当たったのだって奇跡でしかなかった
それを忠告した斎藤さんだったけど、私には意味が通じておらず「髪の心配、ありがとうございます」と感謝した
最初のコメントを投稿しよう!