小姓

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「大丈夫か?」 近寄ってきた斎藤さんの手元を見下ろす 彼に抱えられている黒猫は脇の下に手を入れられているため、ぶらーんと足が宙に揺れている ピリピリした雰囲気の中、真顔の斎藤さんが猫をぷらぷらさせている姿は、なんとも異様で……可愛かった 「って、和んでる場合じゃないから!!」 ぺしり、と顔を叩いて自分を一喝する 突然、自虐的行為をする楓を見た斎藤が微かに目を丸くした 「斎藤さん!さっき、副長って言いましたよね!?」 さらっと流しそうになったけど、そういえば斎藤さん、あの人のことを副長って呼んでたよね!!? 「あぁ、間違いなく言ったな」 斎藤さんに抱えられている猫が、なぁーん、と鳴き声を上げた うむ、可愛いけれども今はそれどころではない!! 「副長って土方さんと山南さん以外にも居たんですか!?」 「総司から聞いていないのか?」 斎藤さんの質問に、勢いよく首を縦に振る 「今のは新見副長だ」 「まさか、局長も三人いるぜ、とか言いませんよね?」 あはは、とふざけて言うと「局長は近藤さんと芹沢さんの二人で十分だ」という驚きの返事をいただいた 「って、二人目がいるのかい!」 「それも今知ったのか?」 「はい!」 知らなかった…… 沖田先生を罵りたいけど、どうせ「聞かなかったでしょ」とか言うに決まってる 「あぁ見えて副長。今回は上手くいったが、今後は用心するんだな」 確かに、今回はたまたま斬撃が止まったが、次はないだろう 石が当たったのだって奇跡でしかなかった それを忠告した斎藤さんだったけど、私には意味が通じておらず「髪の心配、ありがとうございます」と感謝した
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