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「私が新選組に入ったら、全力で土方さんに仕えるのに…。」
するりと畳を撫でる
「…私は楓がこの時代に生まれてくれて、嬉しいよ」
ハッとして立ったまま私を見下ろす鈴子の顔を見る
弱々しい笑みを浮かべた親友の瞳が微かに揺れていた
「……ごめん、私…そういう趣味は「怒るよ?」
笑顔で頬を引きつらせる鈴子はいつも通りだった
そんな鈴子をみて安堵する
「…ありがとう」
恥ずかしくてボソリとお礼を言うと、嬉しそうに笑ってくれた
その笑顔が嬉しくて、照れ臭くて、持っていたノートを抱きしめた
本当は一日中、いや、一生ここに居たかったが…引きずられるように八木邸を後にする
「次はどこに行くの?」
実際、八木邸と西本願寺、池田屋しか行きたい所がなかった私はブラブラと鈴子の後を追った
新選組の歴史について、ほぼ無知な私は他に行きたい所なんてない
「島原に行きたいの!!」
地図を見ることなく歩く鈴子の後をのんびりとついて行く
道を知ってるということは、以前にも行ったことがあるのかもしれない
「ふ~ん…」
島原って何だろ?
ぼーっとそんな事を思いつつ、鈴子から貰ったノートを鞄にしまう
鈴子に連れられて島原まで来ると大きな門があった
「この門が島原って名前?」
門を見上げて首を傾げる
この門を見たかったなんて…物好きな
「はぁ…楓、島原っていうのは「ん?」
鈴子の言葉なんて耳に入らず、門の近くに生えていた木の根元へ歩み寄る
そして、その木に立て掛けられているモノをじーっと見つめた
頭の上では柳の葉が風になびき、さらり、と音を立てる
「どうかした?」
鈴子が私の後ろから根元を覗き込んだ
「楓、それって」
鈴子が声を出したのとほぼ同時に、私は刀に手を伸ばした
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