ハグルマ

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「あ、待って!!」 刀を手に取る私を鈴子が止める そんな鈴子の声は私の耳に届いていなかった あれ? なにこれ……… 持った途端に感じる刀の重み その重さに引かれるように、体の力が抜けて地面に膝をついた 驚いて刀を見下ろすと、自分でも戸惑うほどに土で薄汚れた刀に目を奪われた 目をそらしたいのに そらせない………… 古びた外見とずっしりと腕に伝わる重さに、無知な私でもこれが本物なのだとわかる 刀を見下ろしていると、少しずつ周りの音が遠退き、目の前の刀だけが鮮やかに見えた 耳元でうるさいほどに心臓の音が響き、自然と呼吸が浅くなる 瞼が重くなって意識がぼんやりしてきた そんな異常な感覚に戸惑うが、自分の手は意思と反して勝手に動く 微かに震えた手で柄を持って刀を鞘から少しだけ抜くと、キラリと刃が光った ドクンッ 刀の刃を見た途端に心臓がさっきよりも強く跳ねた 息が上がり、体の奥からじんわりも熱が込み上げてくる これは一体…… 「楓!!!」 肩を強く揺すられてハッとする 刀から目を離して鈴子を見ると、彼女は安心したように表情を和らげていた 「もぅ…いきなり黙らないでよ。焦ったんだから」 「ご、ごめん……」 今の…なんだろう… 頭がぼーっとする 刀を見ている時には聞こえなかった声や音が聞こえ始め、無意識に刀を両手で握りしめた 「その刀…「持って帰る」 即答する私に鈴子が目を丸くする 理由は分からないけど、刀を手放しちゃいけないような気がした 地面についていた膝を軽く払って立ち上がると、刀を強く抱きかかえる 「…楓、やっぱりその刀は「ほら、島原は見たんだから、次に行くよ」 島原を門だと思い込んでいる楓は刀を持って門に背中を向ける 鈴子は眩しそうに門を見上げると、直ぐに楓の後を追った
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