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「…おい」
彼の第一声はそれだった。
とても不機嫌そうなのは見なくても声だけで分かる。
「な、なに?」
「そこどけ、座る」
そう言って彼″露咲″はソファを指差す。先に座っていた光晴は困惑気味に横へズレるとスペースをあける。
「やけに不機嫌だな…今まで仕事してたのか?」
隣に座った露咲へ問いかければ眼鏡をかけていない事に気が付く。答えを聞かなくても分かる。徹夜したのだろう。
「あぁ…今、入稿した。くそ眠い…膝貸せ」
眼鏡をかけていないので周りが見えていないのか眉間にシワが寄っている。横暴な口調で膝枕強要すれば答えも聞かず横になる。
「お、おい…俺、今日家事当番なんだけど」
時刻は午後6時。
丁度、晩ご飯の頃合いだ。
「知らん。はぁ…男の膝は硬くて寝心地が悪いな」
「じゃあ、布団で寝ろよ…ってもう寝てるし、のび太並みだな」
膝の上では規則正しい寝息が聞こえ、動こうにも動けなくなったこの状況をどう打破しようかと
光晴は深い溜め息を吐き出した。
end
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