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「お待たせしまし…」
た。
と言う前に雪兎が知らない女性2人組に囲まれているのを発見する。
「ねぇねぇ、今ヒマ?ウチらと遊ばない?」
「さっきからずっとココにいんじゃん?誰待ってんの?彼女?」
彼女らの質問攻めに困惑しているのか、さっきから首を横に降るとこしかしていない。これは相当怯えているのだろう。
「彼女じゃありませんよ。待ち人は私です」
彼女らの背後に立てば見下すように言い放つ。品のない女性は嫌いです。関わりなくない一心で荷物を持ち直すと雪兎の手を掴む。
「うちの子に手を出すのは辞めていただきたい。さ、行きますよ雪兎」
「え…?あ、あああの!?」
パニックになっている雪兎を強引にその場から連れ出せば無言で歩き続ける。雪兎がなんて言えばいいのか困っているのが背後から伝わる。
「あ、あの…つ、露咲さ…えっと、その…ごめんなさい」
「なぜ、謝るんです?」
謝罪の言葉に歩みを止めれば振り返り相手を見据える。雪兎はその視線が耐え難いようでキョロキョロと落ち着かない。
「迷惑かけたので、その…」
「迷惑をかけたのは私の方です。トイレが混んでいたのでなかなか戻れず、貴方を待たせた結果がアレです」
苦虫を噛んだように眉間に皺が寄る。その表情を見て雪兎がビクッと怯えたように肩を揺らす。
「つ、露咲さんは…悪くないです。ぼ、僕がしっかりしてないからで…」
雪兎の言葉に自然と頬が緩む。相手の手を離せば髪の毛を乱暴にワシャワシャ撫でる。
「貴方といると息子の事を思い出します。ありがとう。…さ、帰ってガーデニングの続きしますよ!」
「…え?えぇ!?あの、ちょっと待ってくださいよ、露咲さん!」
先に歩き出せば、後からパタパタと早足で相手が翔ってくる音が聞こえる。今日は思い掛けず楽しい一日でした。
end
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