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はぁ…。
短い溜め息を吐き出せば雪兎と目が合う。すぐに雪兎が逸らしてしまったので一瞬だった。
「ん?どうかしましたか?」
雪兎は何か言おうとオロオロするが上手く言葉にならないらしい。
「あ…あの、僕…」
彼の瞳に大粒の涙が浮かぶ。
皆、ギョッと驚いたように慌てふためく。
「え、相崎ちゃん?!どしたの?」
「ゴ、ゴミでも入りましたか?」
「おい、大丈夫かよ?」
彼は心配させまいと首を横に降る。雪兎曰く、嬉し涙だそうだ。皆、安堵の溜め息を吐き出せばハンカチを荷物から取り出す。
「ほら、これで吹いてください?」
ハンカチを受け取った雪兎はまだ零れ落ちる涙を必死に拭う。彼の一生懸命さに笑みを浮かべれば光晴が不満そうに呟く。
「なんか露咲って雪にはやたら優しいよな?」
「…なんですか、いきなり?」
「だって俺には笑ってくれないじゃーん」
不貞腐れる光晴に呆れていれば銀河が「ふへへ」と笑うので不審に思う。
「何ですか?銀河」
「なんかお父さんとお母さんみたいだなぁって」
…え?
一瞬、自分の聞き間違えかと思ったが隣にいる光晴も同じ反応なので間違えではないと確信する。
「ちょっと待って下さい。銀河と雪兎が息子だというのなら許せますが、光晴が奥さんとか嫌です」
「いや、奥さんはお前の方だろ?」
…え?
本日二度目の聞き間違えかと思ったがこれも違ったようで、光晴の真顔をまじまじと見る。
「…え?」
俺の素っ頓狂な声は終盤を迎えた花火の連発により、誰に聞かれることもなく消えていった。
end
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