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「はぁ~…今日もツイてねえな…」
溜め息混じりに呟きながら大通りの交差点で信号が変わるのを待つ。俯けていた顔を上げ歩行者用の信号機を確認するが、立ち止まる人を表すマークをはっきりとした赤色で囲われた、所謂[止まれ]表示のままであった
見たいアニメがあるのに、急げば急ぐ程赤信号にぶち当たる…俺の運の悪さは何時も通りだな
今日だけでも目覚まし時計が鳴らなかったり、一文字書くたびにシャー芯が折れたり、自販機で買い物しようと財布を開けば小銭が全部落ちて溝に入ったり…そしてこれだ…
今まで起こった出来事で言えばこれ位可愛いモンだけど、急いでいる事もあって一段とイライラするぜ
鉄 護(くろがね まもる)…何とも一風変わった名前だと、18年生きてきた今でも思っている
大体、漢字二文字がフルネームとかおかしいだろ。てか前例が無さそうな組み合わせだよ、くろがねとまもるって…
と、内心呟いてる内に信号が変わったみたいだ。一秒でも早く家へ帰りたいが為に勢いよく駆け出そうとした時、ふと右を見ると結構な速さでトラックが交差点に向かって走って来てた
赤信号なのに速度を緩める気配がしない、もしかして寝てるのか…?かなりデカイから長距離トラックっぽいな
『運ちゃんさっさと起きろよ』と心の中で呟きながら視線を前に戻すと…子供が渡っていた
それを見た瞬間、考えるよりも先に子供目掛けて素早く駆け出した。小さな三輪車を一生懸命に漕ぎながらゆっくりと交差点を渡る子供は、自分に迫ってる危険に気付いていない…!
(間に合え、間に合えぇぇぇぇッ!!)
子供の元へ辿り着いた頃にはトラックは目の前まで迫っていた…焦りで冷静さが無かった俺は子供を抱き寄せ、庇うように身を屈めて衝撃に備えていた…
ドガァッ!!
ぼやけて見える景色は、灰色のアスファルトを忙しなく走り回る人達の足と、目の前を流れていく血…
あの子供、大丈夫だったかな…?膝小僧を擦りむいて、泣きべそかいてるかもな……
段々と、まぶたが…重く…なって、いく…
まったく…ツイて、ねえぜ……
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