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あぁ、煩わしい。
漆黒の髪の、少女の赤い瞳は夜明けに指す暁を睨む。
カノンノ「あぁ、また始まる。忌まわしくも喜びに満ちた夜明けが始まってしまう。君にとっての希望の光は、僕にとっては、僕焦がす炎。いつか君の手をつかむ時がくる。その時はどうか。淡く優しい闇の中。すべてが消えた無の中であらんことを。」
カノンノが何かを詠うように呟くと、乾いた拍手が背後から聞こえた。
フレイ「素晴らしい詩ね。ホント。悲しいほどに。」
赤いポニーテールの女性、フレイ・シュームライトだ。
今、カノンノがいるのは古い教会。鐘はならないが、真っ白な外見が神聖な雰囲気を醸し出している。
カノンノ「こんな朝早くになんですか。フレイさん」
フレイ「あなたこそ。朝っぱらからどうしてそんな暗い詩を読んでいるの?」
カノンノはため息をつき、フレイを見る。
この人は苦手だ。おせっかいというか、何だか過保護なところが。
カノンノ「私はブレイカー。破壊者ですよ。だからってわけじゃないけどね。」
フレイは困惑した。
そういう意味じゃないと訴えるかのように。
カノンノはこうしてフレイさんをからかうのを楽しんでいた。
例えるなら心配する親を小馬鹿にする反抗期の娘のように。
少し気が晴れたカノンノは教会のドアへと歩を進める。
カノンノ「それよりも、世界を壊そうとしてるテロリストが何で教会なんかを隠れ家にしてるんです?」
フレイ「灯台下暗しってやつよ。こんなオーシャンビューの閑散とした教会なんかにテロリストなんていない。普通そう思うでしょ?」
カノンノとフレイは中へとはいる。
ステンドグラスが中央の通路を照らす。
閑散としてるものの寂れてるわけではなく、手入れは行き届いている。
少し埃っぽいのがたまに傷だが、それでもカノンノはここ数週間で慣れた。
カノンノ「いいなぁ、私もこんな素敵な教会で、ソルさんとフレイさんみたいに契りを交わしたいなぁ、誰かと。」
カノンノは目を細め、にやけながらフレイを見る。
フレイは少しだけだが頬を染める。
ソル「それくらいにしてやれよ。カノンノ。」
入り口とは別の戸が開き、そこから白髪の青年が現れた。
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